はなしの泉

 

第1回 オリンピックと人権

 1968年のメキシコ五輪、陸上男子200メートルの表彰式で「異変」が起きました。
表彰台に立ったアメリカの黒人選手が黒い革手袋の右拳を突き上げ、黒人差別に抗議しました。 金メダリストのスミスと銅メダリストのカルロスです。 銀メダリストのノーマン(オーストラリア・白人)は「人権」と書いたバッジを胸につけて表彰台に立ちました。 ノーマンはオーストラリアの白豪主義(非白人差別)に抗議しました。
 アメリカ五輪委員会は2人を選手団から追放しました。 しかし五輪憲章には「国もしくは個人に関する差別は、いかなる形であっても、五輪運動とは相容れない」と明記しています。
 オリンピックは、様々な人種差別を克服する中から選手層を拡大しつつ競技レベルを向上させてきたのです。 競技施設や用具、トレーニング技術、栄養状態などの発達もさることながら、差別をなくして選手の裾野を広げ、優れた選手を次々に参加させてきたことが競技レベルの発展に貢献しているのです。
 オリンピックも、人権問題を解決するために貢献しているのです。

第2回 教科書がタダになった話

 1961年、高知市内の部落の母親たちは「教科書をタダにする会」を作って署名運動を始めました。
 
 この地区は半農半漁の貧しい部落で、母親達の多くは失対事業で生活していました。当時の失対の日給は300円、それに対して小学校の教科書代は約700円、中学校は1.200円で負担は大変重いものでした。
 「憲法では義務教育はタダと決めている」と先生から教えられて、母親たちの署名運動が始まりました。部落解放同盟や政党、労働組合などの支援を受け、市議会や市長へ陳情しました。 高知から運動は全国に広がり、1962年に文部省は義務教育の教科書を無料とする法律を制定し、運動は画期的な成果を上げました。
 部落解放運動は部落のエゴではなく、憲法の理念を実現することであり、国民全体の利益になる事を示す好例といえるでしょう。

第3回  接客 熟年ならでは 働くベテラン

 関東を中心に11店舗を展開している「心の居酒屋」(本社・東京)の従業員平均年齢は67歳。求人条件は60歳以上。「高齢者がかもし出す雰囲気で客の心が安らぐ」との考えから、社長の可知さんは60歳以上にこだわっています。さまざまな人生経験から客の相談にも乗り、好評を得ています。
 また熟年ホテル従業員専門の人材派遣会社「アイエヌジーエンタープライズ」(東京)は60歳以上の経験者など620人を登録し、旅館・ホテルのマネージャーや教育係りとして派遣しています。接客マナーは、熟年ならではのものがあります。
 緊急通報サービスの「安全センター」(東京)は、従業員174人のうち4割が50歳以上。「トラブルが起きたときの冷静な対応や安定感では若い人は高齢者にかなわない」と大村社長は高齢者の能力を高く評価しています。「長年医療現場で働いてきた人の経験と若い人のパワーの組み合わせが大切」とも語っています。
 
「盛岡ふるさとガイドの会」会長の川辺さんは66歳。石川啄木や宮沢賢治ゆかりの地を修学旅行生などにボランティアでガイドしています。子供だったころの盛岡のことなど、盛岡の町について詳しく話せるのは長年の人生経験によるものです。

第4回 松本清張と『砂の器』

( 映画『砂の器』のポスター)
松本清張の人気作品の一つに『砂の器』があります。
 
 人気ピアニストの男性は政治家の娘との縁談がまとまりつつあるとき、男性の過去を知る元警察官に出会い、田町のバーで懐かしい故郷の方言で話しこみます。その後元警察官は操車場で遺体で発見されます。
「ズーズー弁で話していた客」との店の従業員の証言から犯人捜査が始まりますが、事件は意外な展開を見せます。ズーズー弁は東北地方だけでなく中国地方の島根の一部でも使われていたのです。
松本清張のトリックは見事です。
 
 ところでこの小説が1973年に映画化されたとき、問題が起きました。映画の終わりに、ハンセン病の親子が石を投げられて各地を転々と放浪する悲惨な場面が挿入されました。小説ではハンセン病のことは抑制的に扱われていましたが、映画ではハンセン病へのマイナスのイメージを印象付ける場面が加えられました。
 
 これに対して全国のハンセン病関係者は「差別を助長する」と抗議し、映画の最後に字幕を入れることになりました。
 
(字幕)――――――――――――――――――
 ハンセン病は、医学の進歩により特効薬もあり、現在では完全に回復し、社会復帰が続いている。それを拒むものは、まだまだ根強く残っている非科学的な偏見と差別のみであり、戦前に発病した主人公のような患者は日本中どこにもいない―――

第5回 携帯電話による事件

◆PTAが乗り出す

「子どもたちの人権を守ろう」と、香川県PTA連絡協議会はインターネット有害情報を保護者に知ってもらう活動を進めています。
インターネットは発信者の顔が見えず、犯罪に悪用されるケースが増えています。携帯電話からも接続できるので、子どもが被害者になる事件や逆に加害者になる事件も起きています。香川県教育委員会によると、県内中学生の四割以上が携帯電話を持っています。
 
◆携帯電話の危険性
 
 ある学校では、ネット上に「Aは汚い」と悪口を書かれて犯人探しが始まり、クラス中に不信感が広がりました。A君も、書いた本人も不登校になりました。
 メールで「金持って来い」と書かれ、怖くて学校へ行けなくなった例もあります。これは犯罪です。他にも、出会い系サイトで知り合って援助交際や暴行などの被害を受けた、アダルト情報に入り込んで大金を請求されるなどの事件も起きています。
 子どもたちと携帯電話の使い方を話し合ってみませんか。
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