2015年9月

「同和問題」(部落差別)を知っている人に、問題解決のために必要なことをたずねたところ、1位は「同和問題に限定せず、人権全般にわたって意識を高める」(約6割)だった。一方、「どのようにしても差別はなくならない」が21.1%、「そっとしておけば自然になくなる」も15.2%あった。
同和問題の解決策

5人に1人「差別はなくならない」、約6ポイント増

【質問】 同和問題を解決するために必要と思われることは何ですか(あてはまるものすべてを選ぶ)。
同和問題の解決に必要な施策(単位%、カッコ内は前回調査)
人権意識を高める
60.8(60.0)
家庭で子どもに教える
40.6(40.8)
えせ同和行為を排除する
26.9(29.9)
同和問題を啓発・広報する
17.6(14.0)
差別を見聞きしたら注意する
15.2(14.6)
人権侵害被害者の救済制度を充実
13.5(13.7)
相互理解の交流会
12.8(15.5)
同和問題の相談活動充実
12.4(10.1)
わからない
6.7(3.0)
そっとしておけば自然に解消
15.2(17.3)
差別はなくならない
21.1(15.4)
【調査結果】 1位は「同和問題に限定せず、人権全般にわたって意識を高める」(60.8%)、2位は「家庭で子どもに差別をしないように教える」(40.6%)、3位は「えせ同和行為を排除する」(26.9%)などだった。
5年前の前回調査と比較すると、「同和問題に関する啓発・広報活動を推進する」(17.6%)が約4ポイント増えている一方、「どのようなことをしても差別はなくならない」(21.1%)が約6ポイント増えている。1位「県・市町の広報誌」34.4%、2位「テレビ・ラジオを活用した啓発」33.8%、3位「パンフレット・ポスター」及び「新聞・雑誌・週刊誌」21.2%、4位「講演会や研修会、座談会」13.8%、5位「人権をテーマとした行事(イベント)」13.5%など。
5年前の県政世論調査と比較すると、広報誌は約6ポイント、講演会等は約5ポイント、それぞれ減少している。一方、インターネットやイベント、疑似体験などは若干増加し、新しい啓発手法への関心が高まっていると言える。堅いものが敬遠され、身近で簡単に楽しみながら学習できる手法に関心が高くなりつつあるようだ。インターネットは今後更に関心が高まると予想され、新たな啓発手法として重視する必要がある。高齢者や障害者の疑似体験は当事者の身体的機能をよく理解できることから啓発効果は高い。かがわ健康福祉機構・長寿社会部による高齢者疑似体験の出前講座に人気がある理由もわかる。
当事者のことをより深く理解する点では人権問題当事者との交流会も同じで、これも重視されるべきである。
なお、広報誌による啓発や講演会・研修会等は基礎的な啓発事業であるが、前回調査より約5~6ポイント減少していることから、マンネリ化していないか見直しが必要ではないだろうか。見直しのポイントは①読み手・参加者の立場(ニーズなど)が重視されているか②分かりやすく、関心がわく身近な話題が提供されているか③新しい人権情報が発信されているかなど。参加者アンケートをもとに、毎回担当者が内容を工夫しているところは、参加者が定着し、口コミで参加者が増加している。
(香川人権研究所)
【コメント】 人権教育啓発推進法が施行されていることに加え、県民世論でも人権意識を高めることが1位であることから、行政や学校などはもとより、企業や各種団体、地域などでも人権教育や人権啓発をさらに積極的に推進していくことが求められる。
人権意識を高めるということは単に知識や理念を知るだけでなく、人権尊重の実践力を育成することが重要である。なぜなら、点字ブロックの意味を知っていても、その上に無自覚に自転車やバイクを停めているのでは意味がないからである。香川県人権教育・啓発に関する基本計画では、人権教育の目的は「人権尊重の精神を生活の中に活かしていくこと」、人権啓発の目的は「他人の人権にも十分に配慮した行動がとれるようにすること」と定めている。
また、香川県人権教育基本方針(香川県教育委員会)では、「日本国憲法及び教育基本法の精神にのっとり、また、同和教育がこれまで積み上げてきた成果を生かしながら、人権尊重意識の高揚を図ること、及び人権課題の解決と人権が尊重される社会の実現をめざす実践力に富む人間の育成を目的として、学校教育と社会教育のあらゆる場を通じて、人権教育を推進する。」としている。
「相互の理解を深める交流会を開催する」(12.8%)は1割超であるが、同和問題に限らずあらゆる人権問題は当事者性があり、本人から聞かないと伝わらないことが多い。隣保館などを利用して交流会を積極的に開催することが正しい理解を進めるうえで効果的である。

寝た子を起こすな

「そっとしておけば差別は自然になくなる」が15%超みられる。「自然解消論」と呼ばれる考え方で、問題解決にブレーキの役を果たしている。厳しい差別の現実があるために子どもたちに教えないでほしいという地区住民がいることは理解出来るが、部落差別は自然現象でないので自然に解決することはない。人権侵害や差別は予断に基づく場合が多く、本人も無意識無自覚なケースが多い。このような場合は教育や啓発等によって本人の自覚を促すことで再発防止につながる。だがいわゆる「確信犯」的な場合には法律や条例などによる規制、あるいは社会運動などが必要である(オルポート「偏見の心理」)。「子どもに教えるから部落差別が残る」との声もあるが、教育や啓発の目的は差別をなくす人づくりであり、その一環として差別解消のための取り組みなどを教えている。なお、本人は差別をなくそうと一生懸命話しているのだが、差別の話ばかり強調して結果的には「差別を教えている」と誤解されかねないケースも見られる。
 
(香川人権研究所)
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