2016年4月
「人権立県香川づくり」の提言 その1
在特会(在日特権を許さない市民の会)によるヘイトスピーチが問題になっています。四国でも2014年に「『大切な遍路道』を朝鮮人の手から守りましょう」と書いた貼り紙が香川、愛媛、徳島の三県で発見され、四国遍路世界遺産登録を目指す四国知事会は「外国人に対する差別的な内容の貼り紙で決して容認できない」と緊急アピールを発表しました。
部落解放・人権政策確立要求香川県実行委員会は「憲法、人種差別撤廃条約、国際人権関係機関からの勧告、そして地方分権の趣旨も踏まえて県民、県内在住外国人、外国人来県者も含む様々な人の人権を守るための施策の実現」を求め、2016年1月22日、5項目の「人権立県香川づくりの提言」を浜田恵造香川県知事に提出しました。「提言」を5回に分けて紹介します。
部落解放・人権政策確立要求香川県実行委員会は「憲法、人種差別撤廃条約、国際人権関係機関からの勧告、そして地方分権の趣旨も踏まえて県民、県内在住外国人、外国人来県者も含む様々な人の人権を守るための施策の実現」を求め、2016年1月22日、5項目の「人権立県香川づくりの提言」を浜田恵造香川県知事に提出しました。「提言」を5回に分けて紹介します。
提言①:人権条例の見直し、個別救済型人権条例の研究
県及び各市町は、既存の人権条例(宣言・普及啓発型人権条例)及び人権施策に係る指針等を見直し、ヘイトスピーチが社会悪であることを公に表明する。そのために、既存の人権条例に定められている人権侵害や差別の範囲の見直しや、差別禁止の努力義務規定から義務規定への改正を行う。また、「香川県部落差別事象の発生の防止に関する条例」のような枠組みを使った個別救済型人権条例を、表現の自由との両立に留意しつつ、ヘイトスピーチに適用することの可能性を、自治体の審議会等で研究する。
1.宣言・普及啓発型人権条例の改正
県内8市9町で定められている宣言・普及啓発型人権条例の場合、具体的な規制の枠組みをもつものではなく、それゆえ人権侵害や差別等の明確な定義付けがなされているわけではない。しかし、それでも条例が存在すること自体の意味、自治体及び住民の責務規定並びに自治体の施策に関して規定していることは、それを媒介とする対策・対応を自治体に求めているのであって、その点において意味がある。なかでも、差別や人権侵害の禁止を努力義務ではなく義務付けている条例の存在は、抑止効果とまではいえずとも、住民への啓発、具体の対策・対応における存在意義を見出すことはできる。そのことは、香川県内でのヘイトスピーチの拡散防止のためにも必要である。宣言・普及啓発型人権条例においては、ヘイトスピーチが社会悪であることを公に表明するためにも、条例がカバーする範囲(対象とする人権侵害や差別等の領域)の見直し、及び努力規定から義務規定への見直しを検討するべきである。
2.個別救済型人権条例の検討
「香川県部落差別事象の発生の防止に関する条例」のような個別救済型人権条例の考え方・枠組みを活用することも選択肢としてはあり得る。同様の条例は、大阪府、徳島県、福岡県、熊本県でも制定されている。目的は、違反者を罰することではなく、被害者を救済することである。その意味では、表現の自由の制約や萎縮効果を軽減させる可能性を有している側面もあり、的確に機能した場合、表現者を罰することなく被害者を救済することが可能となる。 しかし、これを表現行為による人権侵害に適用する場合、一般に、規制対象となる表現行為が幅広くなりがちである。さらに、表現発信者の権利の保護が万全ではない制度のなかで幅広い表現が規制対象となって、表現発信者が社会的に責められることになる可能性もあり、表現の自由の保障への重大な脅威となりうる危険性もある。 したがって、個別救済型人権条例については、表現の自由との関係、ヘイトスピーチに適用することの課題等を自治体の審議会等で研究するなかで、ヘイトスピーチの害悪と人権救済のあり方について理解を深め、表現の自由と両立し得る条例の在り方を検討していくことが必要である。(次号に続く)