2019年1月
人権マガジン
職場の人権問題 ~誰もが働きやすく~
職場のいじめ・嫌がらせ647件
上司が日常的に「こら、ボケ」
【事案の概要】
Aさんは所属上司から「おい、こら、お前、ボケ」等と日常的に言われ続けていました。また、上司は近くに寄ってきて他人に見えないようにシャドーボクシングの真似をしたりしました。このことを事業主に相談しましたが解決しませんでした。そこでAさんは、上司のパワーハラスメントを止めさせ、働きやすい職場になるよう香川労働局へ助言・指導を申し出ました。
【助言・指導とその結果】
労働局長は、事業主にパワーハラスメントの提言で示されている類型(精神的な攻撃等)を説明し、上司の行為がパワーハラスメントにあたる可能性があり、社会的責任が問われる可能性があるので注意するなど、対応するよう助言しました。常務が上司を指導した結果、上司はAさんへの接し方を改善しました。
罵声を浴びて体調を壊す
「連合香川」の労働相談(2016年12月6~7日)に寄せられた相談件数139件のうち、差別やいじめの相談は27件でした。内訳は母性保護(マタハラ)2件、セクハラ4件、嫌がらせ(パワハラ)が21件などです。嫌がらせの内容は、罵声を浴びせる、挨拶しない、仕事を与えない、「あほか」などの暴言です。相談件数は2012年度・100件、2013年度・115件、2014年度・129件、2015年度・100件、2016年度・120件、2017年度・139件で、毎年100件以上の相談が寄せられています。
【相談の事例】
①職場の先輩女性から「仕事が遅い」など大声で罵声を浴びせられ、挨拶もしてくれないことが続き、体調も思わしくない(アルバイト・女性)。
②上司から「結婚できない」「相手を選ぶな」などハラスメントを受けている。同僚にも「村八分」にされている。5人の職場の同僚も同調してくれない。退職も考えている。(正社員・男性)。
互いにパートナー意識を
「いじめ」(ハラスメント)被害者の中には、「自分にも責任があるのでは」「運が悪かった」などと考える人がいます。ほとんどの場合、職場内に原因があるのではないでしょうか。労災防止の研修会では、「ハインリッヒの法則」が取り上げられます。1件の重大事故が起きる陰には、それにつながる29の軽微なトラブルが起きている、更にトラブルにつながるミスなどが300件あるという経験則です。これに従うと、深刻ないじめが起きるのは偶然ではなく、日常的に人権侵害につながる恐れのある言動が放置されている結果とも考えられます。
就業規則でいじめの禁止・防止義務を明記したり、相談・通告システムを作ったり、研修も行われています。いじめを防止するためにはいじめを見抜く人権感覚の育成が大切です。更に、いじめ言動に対しては職場全体で抗議し、管理職も毅然とした対応をする実践力が不可欠です。研修では、いざとなった場合の実践力を訓練するために具体的なケースを設定してロールプレイをしてはどうでしょうか。例えば、▽「うつ病」の人を非難・排除するような言動が出た時、あなたは、あなたの職場は、管理職はそれぞれどう対応しますか、▽病気がちで通院のために休暇をとることが多い人に対する非難や批判が出た時…、▽「あの人…」と特定従業員の家庭環境や家族のプライバシーに関連した非難や差別的な言動が出た時…など、人権尊重の立場からどう対応するか実践的な研修を推進し、ハラスメントのない明るく働きやすい職場づくりを進めましょう。
研修で再確認すること
①誰もが働きやすい職場にするために互いにルール(人権尊重)を守る
②管理職は部下が人権侵害しないように管理する義務がある
③お互いに不可欠なパートナーである