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2018年12月

人権マガジン

部落差別被害の実態報告書

当事者の被差別体験を聞き取り
 
 部落差別被害の体験調査結果をまとめた冊子があります。「もう部落差別はない」「昔のこと」「よくわからない」などの声を聞きます。部落差別解消推進法を具体化するためには差別被害の実態把握が前提ですから、今後の教育・啓発活動にとっての資料になるといえます。

部落差別の実態を知って

 冊子のタイトルは『2017年度 被差別体験の聞き取り』、発行理由はこう書かれています。
 「部落差別解消推進法が施行されましたが、なくさなければならない差別の現実を私たちは認識できているでしょうか。相次ぐ部落差別事件をみても、差別を差別ととらえることができない現実があり、解決しなければならない差別の現実を明らかにする必要性を感じました。」しかし、聞き取りでは、「被差別体験を聞き取ることは、過去の身をえぐるような苦しい体験を再度呼び起こすことになるので、たやすく語れない。」という人が出たため、「被差別部落出身ということで嫌な思いをした」「自分自身の体験でなくても見聞きしたことをお聞かせください」と質問を変更し、座談会も取り入れました。部落差別言動は、▽地域社会▽結婚▽企業等▽教育▽インターネット▽土地・問い合わせ▽公務員等による▽その他、と広範囲に及び、日常生活の中無意識無自覚に行われている部落差別言動がクローズアップされています。以下、その一部を紹介します。

地域社会での差別

①50代女性:2007年
  会話中に住まいの話になり、あのあたりに○○(地名)があると言われた。関
 係がないのに、あえて言うことに差別意識を感じた。
②60代男性:2015年
  敬老会で酒をついでまわっているとき「いらん」と断られた。私が部落の人間
 と知って断った。根強い差別がまだ存在していると感じた。
③60代男性:2007年頃
  屋根の雪下ろしで、ある業者(被差別部落)を紹介したところ、「そこの人は
 なんぼ請求するかわからん。オレオレ詐欺みたいに。他に業者はないか。」と言
 われた。作業単価は、町と建設業協会で決めている。
④60代女性:2015年頃
  老人施設利用者の送迎時、ある部落の近くまで来たら「うちは川を挟んでこっ
 ちだけなぁ、あっち(被差別部落)とは違う」と、ある人がことさら強調した。
⑤60代男性:2013~2014年頃
  息子が被差別部落出身の彼女と結婚した時「式に出ん」という親戚もいた。そ
 の後も差別の根が深いと思わされた出来事が3・4年前にあった。60代の女性3人
 が前を歩いていて「Kさんとこのお嫁さんは○○の人だって」と話すのが聞こえ
 た。彼女たちは後ろに私がいることを知らず、私は「何か迷惑かけましたか」と
 彼女たちに言った。後日、彼女に「どういう意図で話していたのか」と尋ねたが
 「べつに」と話をそらし、触れてほしくない態度を見せた。同和教育研修で学ん
 できたはずなのに他人事としかとらえていないと思わされた。
⑥60代女性
  「どこに住んでいるの」と聞かれて「○○です」と答えた時、相手の方がどん
 な表情をするか気になる。目を伏せ、会話が続かなくなるととても悲しい気持ち
 になり、私自身も相手の方と話すのが臆病になる。
⑦70代女性:2017年
  同じ苗字の女性から「同じ名前だけどあんたとは違う」と言われた。何が違う
 のかと思ったが、「部落」ではないと言いたかったのかと思った。

結婚差別

①50代女性
  私のいとこは、2度も部落差別によって破談になった。日取りも決ま
 っていたのに。それ以来、結婚の希望もなく生活している。相手の方
 は2人とも県外の方、いとこは将来をなくしてしまった。泣き寝入りし
 ている人が多いのではないか。
②2012年
  交際中に地区出身ということを彼女に伝え、結婚前提に交際。子ど
 もができ、結婚の申し込みをしたが、彼女の父が無理やり彼女を産婦
 人科に連れて行き、子供を亡き者にした。後に父親が、堕胎証明書の
 父親の欄に印を押せと言ってきた。「なぜ自分の子を殺す印が押せる
 のか」と拒否した。彼女とは縁がなかったと諦められるが、なぜ勝手
 に自分の子供を堕ろせたのか、悔しくて…。自分と同じ思いを地区の
 子にさせたくないと泣き明かした。
③30代女性:2012年
  お互い結婚を考え、まず男性に「自分が被差別部落の出身だと親に
 伝えてほしい」と頼んだ。男性はそんなの関係ないと言っていたが、
 親に伝えたところ母親が反対した。理由は、昔彼の父が部落の人に嫌
 な思いをさせられたからだという。全然関係のないことでとてもおか
 しな話だと思った。嫌な思いをさせた人と同じところに住んでいる人
 がみな悪いのか?ただの口実だと思った。結局別れた。
④2011年
  結婚披露宴の時、相手側親族(50~70代の女性)から住所を公表し
 てほしくないと要望された。
⑤40代女性:2007年
  甥が結婚するとき、甥の妻から「おばさんの家とはお付き合いがで
 きません」と言われた。結婚を親に反対されたが、今は行き来をして
 いる。
⑥2010年頃
  2人は交際していて「将来結婚をしたい」と伝えたら、親戚の人が
 「あんなところの人との結婚は絶対許さない」「本家だからだめだ」
 などと反対された。しかし、家族は賛成したので結婚した。
(以下2月号に掲載)
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