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2018年10月

人権マガジン

性暴力被害者の人権

「必死に耐えています」
  「大丈夫?」という言葉が 時に私を苦しめる
  言葉では言い表せないくらいの 苦しみを味わった
  大丈夫ではない 大丈夫なはずがない
  心に負った傷の痛み 必死に耐えているのです
 
 これは、性暴力被害者の方が心情を描いた詩です。被害者が必死で自分に耐えている姿がひしひしと伝わってきます。

深刻なレイプ被害

 犯罪被害者は、警察へ被害届を出せる人ばかりではありません。中でも、レイプなど性暴力被害者の場合は特に被害届が顕在化しにくい特徴があります。その理由は、①「あなたにも責任があるのでは?」など、周囲が正しく理解してくれないから②被害者だと特定されて周囲に知られると仕事が続けにくくなるから③どこに相談したらよいか分からないから④心に受けた傷が大きいために耐えるのが精いっぱいだから、などです。

「お電話ください」

 このように悩む人たちを支援するのが性暴力被害者支援センター「オリーブかがわ」です。同センターが取り組んでいる被害者支援活動は、電話や面接で被害者の方の不安や怒り、恐怖などをお聞きすることなどです。相談電話の約半数は「話を聞いてほしい」「自分でできることがあればやりたい」などです。電話を掛けること自体が被害を克服する勇気ある第一歩です(匿名も可能、秘密厳守)。また、警察や産婦人科など関係機関に付き添いする(刑事手続きの支援、県内の産婦人科など22の医療機関と連携し、けがの治療や性感染症の検査、緊急避妊の措置など)、さらに今後の生活支援(臨床心理士による心理カウンセリングや弁護士による法律相談など)です。
 相談件数で最も多いのはレイプの被害相談です。意外かもしれませんが、県内でも卑劣なレイプ事件は起きています。被害者に配慮して新聞等マスコミ報道は抑制的ですし、被害者が声を上げにくいために関心が薄いかもしれません。性犯罪の加害者は常習的な傾向があり、被害届や相談が早いほど再発防止に効果的です。
 「一人で抱えずにお電話ください。秘密は守ります。安心してください。いろいろご支援できます。一緒に考えましょう。」同センターでは自治体広報誌や香川県ホームページなどで周知活動に努めています。

<強姦・強制わいせつ 認知件数・被害発生率>(『平成29年版 犯罪白書』)

強   姦
強 制 わ い せ つ
認知件数
被害発生率
女    性
男    性
認知件数
被害発生率
認知件数
被害発生率
989件
1.5%
5941件
9.1%
247件
0.4%
(注)「被害発生率」とは、人口10万人当たりの認知件数(男女別)。強姦については、女性人口10万人当たりの認知件数。

性暴力被害者支援センター「オリーブかがわ」

☎087-802-5566、受付時間は月~金曜日(9時~20時)、土曜日(9時~16時)(いずれも祝日年末年始を除く)

二次的被害

犯罪被害者や家族などは直接的な被害だけでなく「二次的被害」も受ける。その一つが心身機能の不調による苦しみ。突然の思いがけない事件による精神的ショックや恐怖体験、愛する人や身近な親しい人を突然奪われた喪失感などによるトラウマから「ASD」と呼ばれるストレス障害になったり「PTSD」と呼ばれる心身の病気が悪化したりする場合がある。
 二つ目は、日常生活での苦しみ。事件の恐怖体験が思い出され、家から出られなくなったり、事件現場付近を通ることができず職場に行けなくなったりする人もいる。事件当時住んでいた場所に住めなくなる場合もある。さらに減収などによる収入減、他方、医療費や弁護士への支払いなどの経済的被害、捜査や裁判を受ける際の時間的負担や精神的な負担などが重なる。厚生労働省では、特別休暇制度の一つとして「犯罪被害者等休暇制度」の創設を事業主に呼び掛けている。
 三つ目は周囲の視線による苦しみ。腫れ物に触るような態度をとられ、「かわいそうに」と避けられたり好奇心の目で見られたりする場合もある。無責任な噂や誤解によって傷つけられる人もいる。「もっとつらい目をしている人もいる」と、本人は精いっぱい頑張っているのにこれでは激励にならず、被害者に苦痛を与える場合がある。被害者を責めたり無理に励ましたりせず、被害者に寄り添って話をしっかり聞いてあげることが必要。
特定非営利活動法人香川人権研究所
〒763-0092
香川県丸亀市川西町南715-1
TEL.0877-58-6868
FAX.0877-28-1011
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