TOPページ
研究所だより
人権マガジン
香川人権研究所概要・組織
事業内容
行事予定
書籍(新刊図書ご案内)
会員募集
リンク
香川の人権ニュース
センターご案内
ちいさな人権博物館
人権マップ

人権マガジン

バックナンバーはこちら >>


「人権立県香川づくり」の提言 その5


 「ヘイトスピーチ対策法」(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)第四条では「地方公共団体は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとする。」とされています。香川県及び県内自治体においても次のような施策の実施を求めます。


提言D:ヘイトスピーチ防止策の確立

県及び各市町は、ヘイトスピーチのもたらす甚大な害悪を直視するとともに、表現の自由の持つ価値にも配慮した上で、ヘイトスピーチに対する有効かつ限定的な規制のあり方を検討する。とりわけ、自治体が管理する公共施設が、ヘイトスピーチに利用されることを防止するために、適正な施設運用を図る。また、ヘイトスピーチの反社会性を広く住民に周知・啓発することによって、行政と住民が一体となって、ヘイトスピーチを許さない社会環境を醸成する。

1.ヘイトスピーチ防止策の検討


 ヘイトスピーチは、攻撃対象となった人びとの尊厳を著しく傷つけ、重大な心理的外傷を負わせる行為であるだけでなく、人権の尊重という憲法秩序を破壊し、公序良俗の根幹を脅かす行為でもある。行政がこれを座視することは、人権侵害に間接的に手を貸し、憲法秩序に対する破壊行為を黙認することに他ならない。従って、県及び各市町においては、それぞれの権限の範囲内で、ヘイトスピーチに対していかなる防止策や規制策が採れるのかを、積極的に検討しなければならない。一方、ヘイトスピーチが外形的には表現行為として行われる以上、表現の自由との調整も必要である。よって、上記の検討に当たっては、行政規制は表現内容には中立的であるべきという「表現内容中立性原則」を前提にしつつ、ヘイトスピーチが重大な人権侵害を引き起こす明白な危険性があり、かつ対抗言論によっては、その害悪を抑止できない場合に限定して、必要最小限度の制約を行う方法を検討することが期待される。例えば、自治体の職員が、ヘイトスピーチを行っている団体に対して、当該行為が権利侵害を引き起こすおそれのあることを摘示し、権利侵害を避けるべく、表現内容や表現方法等を改めることを要請するような指導や注意等の行政指導を粘り強く行うことも一つの方法として考えられよう。こうした行政指導は、あくまで要請であり、ヘイトスピーチそのものを抑制する直接的な強制力は有しないが、しかし、こうした努力を行うこと自体が、一般市民に対して一種の啓発的効果を及ぼし、ヘイトスピーチの反社会性を周知することにつながる。何より重要なことは、規制する権限がないことを口実に、ヘイトスピーチを事実上黙認するようなことを絶対に避けなければならないということである。各自治体は、行政指導等の非権力的な行政手法を総動員して、ヘイトスピーチと闘う姿勢を顕示し、そのことを通じて、ヘイトスピーチは許されざる社会悪であるという認識を表明すべきである。


2.公共施設の管理・運営の適正化


 自治体が管理する市民会館等の公共施設は、いわゆる「パブリック・フォーラム」であり、すべての住民に平等に利用の機会が保障されなければならず、これは憲法21条が保障する集会の自由の要請でもある。したがって、自治体は、施設の使用を許可するに当たって、裁量的な判断を行ってはならず、重大かつ差し迫った危険の発生が明白に予見される場合を除いては、施設の使用を拒否できないと考えなければならない。その一方、悪質なヘイトスピーチを行う団体が、公共施設を利用して集会等を行う場合には、自治体が公共施設の利用を通じて、ヘイトスピーチに側面的に手を貸すことになり、憲法尊重擁護義務を負う公務員が、憲法秩序に反する行為を間接的に支援するという矛盾が生じることになる。よって、自治体は、人権の尊重という憲法秩序を守るべく、公共施設等がヘイトスピーチに利用されるおそれがある場合には、その使用許可に際して、他者の尊厳を傷つけるような言動を控えるよう要請するといった行政指導を行うことによって、自治体としてヘイトスピーチは認めないという姿勢を示すべきである。また、公共施設の利用規約や使用許可願の用紙等に、ヘイトスピーチ等の人の尊厳を著しく傷つける行為は控えるよう要請する文言を明示するとともに、法務省作成の「ヘイトスピーチ、許さない」のポスターを施設に掲示するなど、自治体としてヘイトスピーチに対抗する意思を直接的・間接的に明らかにしなければならない。


3.ヘイトスピーチを許さない社会環境の醸成


 ヘイトスピーチを防止するためには、自治体がそれを認めない意思を明らかにするだけではなく、市民の理解と協力が欠かせない。かつては平然と行われていた女性蔑視の言動が、セクシュアル・ハラスメントとして規制されるようになったのも、それが社会悪であるとの認識が広まったためである。あるいは、かつては「しつけ」の名の下に見逃されてきた子どもへの暴力が、児童虐待として排除されるようになったのも、それが子どもに対する人権侵害であるとの意識が高まったためである。このような経緯を考えるとき、ヘイトスピーチを効果的に抑止していくためには、それが人権侵害行為であり、社会秩序を破壊する行為であるという認識を、多くの人が共有できる社会環境を醸成していかなければならない。そのためにも県及び各市町は、これまで以上に、ヘイトスピーチの反社会性を広く住民に周知・啓発することに力を注ぐべきである。

ページ上へ




香川人権研究所map